ルーマニア空軍 運用機の概説⑴

黒埼ちとせ担当Pのりすとれです。

 

日頃から調査しているルーマニア軍(Armata Română)について、ある程度の情報が揃ってきたものがありますので僭越ながら軽くご紹介してみようと思います。今回は空軍(Forţele Aeriene Române,FAR)の輸送機の概略です。

同空軍では2022年現在4機種13機の輸送機を運用しています。

 

※「機体番号(24bitアドレス)」で表記

 

Ан-26/An-26 "Curl":1機

810(4A35A6) 

 

1969年から量産が始まったアントノフ製の軍用汎用輸送機で、ターボプロップ旅客機として成功を収めたAn-24の軍用発展改良版です。尾部にカーゴランプが設けられ、小型車両や重火器の空輸が可能です。旧東側諸国で軍民を問わず広く運用されました。

810は1985年にタロム航空に納入された機体(YR-ADN)で、92年5月に空軍に移管されました。最盛期には少なくとも10機を保有していましたが、西側製機材の導入で置き換えが進み、現在では1機のみとなっています。2023年度内にC-27Jによって置き換えがなされるとする文献もありますが、後述するC-27Jの調達は2015年以降行われておらず今後が注目されます。

 

Ан-30/An-30 "Clank":2機?

1104(4A35A7)

1105(4A35A8)

 

An-30は1971年から量産された観測/偵察機で、An-24をベースにカメラの設置など航空測量に適した設計変更が行われています。胴体右側のカーゴドアは残されているため、輸送機としての使用も一応は可能のようです。ルーマニアには1976年に配備されました。

こちらは主任務である観測機として、測量や国境地帯の査察等に使用されています。

1105は最近の稼働が確認できていません。(最終確認は2020.09.17)

 

C-27J "Spartan":7機

2701(4A35AA)

2702(4A35AB)

2703(4A35AC)

2704(4A35AD)

2705(4A35AE)

2706(4A35AF)

2707(4A35B0)

 

2009年~2015年にかけて導入された伊アレーニア・アエロナウティカ製の中型輸送機で、ルーマニア空軍にとっても久々の新造機の導入です。C-27JはC-130Jスーパーハーキュリーズとエンジンや電子機器が共通で、機動性も良くそれなりのキャパがあるためか、アフリカや南米など各地で徐々に採用国が増えてきています。

ルーマニアでは、オプション装備のうち空中給油プローブと胴体後部の監視窓を除いて採用しています。

なお現在2704のみ稼働が確認できておらず、何らかの事情で運用停止となっている可能性があります。

 

 

C-130 Hercules

69カ国に採用されたロッキード製のベストセラー機で、ルーマニアでは2タイプを導入しています。ここまで紹介した3機種は全てグレー単色ですが、C-130は緑色を基調とした4色迷彩を纏っています。緑強めのブラウンと濃淡グレーが使われ、機体底面は標準のグレーで仕上げられています。航空自衛隊機と似た雰囲気です。

機体番号は元のナンバーの上2桁+下2桁で構成されています。

 

C-130B:2機

5930(4A35A2)

6166(4A35A4)

 

B型は初期の改良型で、1996~7年にかけて4機が導入されました。4機とも米空軍の中古機で、現在運用中の2機のテールナンバーはそれぞれ59-1530,61-0966です。

 

6150(61-0950)は2003年1月からブカレストの第90空軍基地(アンリ・コアンダ国際空港:OTP)で保管状態に入っています。いくつかのパーツが外されており、部品取りとして活用されている模様です。

5927(59-1527)も2014年時点でOTPで地上保管状態にあることを確認しており、こちらも既に用途廃止(登録抹消)されているものと思われます。Google Earthで現在確認できる機体は1機ですので、どちらか1機は解体済の可能性も否定できません。写真から推測される保管場所が時期により異なることや、両機とも部品取りが行われている関係で航空写真から機体を特定するまでには至っていません。

また、歯抜けになっている4A35A1・4A35A3はこの2機に割り当てられていたと思われます。

 

C-130H:1機(+1機受領済)

6191(4A35A5)

こちらは'07年導入の元イタリア空軍機で、イタリア空軍での機体番号はMM61991でした。2022年7月頃から保管状態にあるとされており、74-2132と入れ替わりになる可能性が否定できません(2023.04.19追記)

また、モンタナ空軍州兵で運用されていた74-2132が昨年末に引き渡され、現在OTPにて保管されています。24bitの割り当てやC-27Jの稼働状況を踏まえると、この7432が現在1機のみ運用されているAn-26の後継となることも考えられます。ただしC-130H自体が退役したB型の補填を意図して導入されている場合は減勢となりますので、今後の輸送力整備がどのように進むのか注目です。空軍は戦闘機戦力の更新(現在進行中)が最優先事項と思われますので、仮に追加導入があるとしてもC-130Hあたりになるのではないかと考えています(※あくまで推測です)

 

以上、ルーマニア空軍の輸送機の概略でした。

 

戦闘機も書こうと思ったのですが、退役を控えたMiG-21の運用状況が非常に流動的で、正確な稼働機体の把握が困難を極めています。もう少し情報を精査する必要がありそうです。